【現役音楽の先生が解説】電子ピアノの選び方〜お子様におすすめのピアノ〜

4月はお子様の入学や進級で気持ちが浮き立つ季節です。「これを機に新しいチャレンジをしよう」「ピアノを習わせてみよう」とお考えのお母様もいるのではないでしょうか。

私はピアノ専攻で大学を卒業後、30年間、小中学校で音楽教師をしてきました。

ヤマハ音楽教室講師も経験しています。

「ピアノを始めさせたいけれど、どんなピアノを選ぶべきか買うべきか分からない」そんなお母様のお悩みについて解説していきます。

この記事は、ピアノを習い始めるお子様向けのピアノの選び方に関するご紹介です。

読んでいただくと、ピアノを習う目的や練習環境に応じた、最適なピアノを選ぶコツが分かります。

目次

電子ピアノは何年使えるの?

選択肢の一つとして「電子ピアノ」を考えた場合に気になる

  • 電子ピアノの耐久性
  • 電子ピアノの種類
  • 電子ピアノを選ぶのはどんな人?

について、ここではご紹介していきます。

 電子ピアノの耐久性

一般的に電子ピアノ使用年数は、10〜20年と言われています。もちろん例外はあり、私の所有していたカワイの電子ピアノは25年間不自由なく使えました。

グランドピアノやアップライトピアノであれば数十年から100年以上もの間、美しい音色を奏でるものもあります。しかし、電子ピアノの寿命がそこまで長くないのは「家電」の仲間だからです。

冷蔵庫やエアコンのように、「10年過ぎたらいつ壊れて音が出なくなっても仕方がない」と覚悟をしておいた方がいいでしょう。

基本的には10年〜20年は使えますが、10年を過ぎたら注意が必要です。

 電子ピアノの種類

電子ピアノには大きく分けて以下の3種類があります。

  • 据え置き型
  • ポータブル型
  • キーボード

この中から、お子様の目指す方向性に合わせて選ぶことが大切です。

据え置き型は、鍵盤・足・ペダルが一体になっており、本物のピアノのように演奏することができます。

ポータブル型は、鍵盤だけが独立した形になっているものです。自由に持ち運べるので、こたつの上や屋外など、どこでも使用することができます。使わないときはクローゼットに収納できるので場所も取りません。

キーボードはカラフルなキャラクターがついたものから、本格的に音が作れるシンセサイザーまで、色々なタイプがあります。中には折りたたんだり、鍵盤を巻物のようにぐるぐると巻いたりしてコンパクトに携帯することができる物もあります。

本格的にピアノに取り組みたい据え置き型ポータブル型
鍵盤で遊びながら音の位置を覚えたり音を聞いたりする入門用として使いたいキーボード

上記のように目的に応じて楽器を選んでいくことが大切です。

 電子ピアノを選ぶのはどんな人?

大人が趣味でピアノを始めたり音楽活動を楽しんだりするには、電子ピアノ、特にキーボードはとても需要が高いと感じています。

キーボードは色々な音色を出せますし、ループ録音機能・自動再生機能などキーボードならではの機能があり「ピアノを弾く」以外の楽しみ方が充実しています。

バンド活動や作曲などに活用できますし、楽器やコーラスの音取りにも便利です。

電子ピアノとアップライトピアノ、後悔しない選び方

大人が趣味として使うなら、キーボードでも問題はないでしょう。でも初めてピアノを習うお子様となると、少し話が違ってきます。

ここではピアノを選ぶ際に初心者におすすめの電気で音が出る「電子ピアノ」と、生で音が出る「アップライトピアノ」について比較していきます。

  • 電子ピアノのメリット
  • アップライトピアノのメリット
  • 最初は電子ピアノから始めてみても

 電子ピアノのメリット

電子ピアノのメリットは以下の3点が挙げられます。

  • 低コスト
  • 置く場所を選ばない
  • 音量の調節が自由自在

アップライトピアノが何十万円もするのに対して、電子ピアノは5万円前後のものからあります。また弦がないので、弦の緩みを調節する「調律代」(年1回程度、1〜2万円)もかかりません。

アップライトピアノは大きくて重いのに対し、電子ピアノはスリムで軽くコンパクトなので置く場所を選びません。

高さ重さ
アップライトピアノ110cm〜130cm200kg〜280kg
電子ピアノ100cm以下10kg〜40kg

また、音量の調節が自在でヘッドホンを使って音を消し、深夜でも練習できます。時間やご近所を気にせず練習に没頭できるのは電子ピアノの大きなメリットです。

つまり、買うのも練習するのも気軽にできることが電子ピアノのメリットになります。お子様に気軽に触れさせたい人は、電子ピアノがおすすめです。

 アップライトピアノのメリット

アップライトピアノのメリットは以下の3点が挙げられます。

  • 本物の響き
  • 表現力が育つ
  • ピアノを弾く筋力が育つ

鍵盤を弾くとハンマーが弦を叩き、空気を振動させることで本物の響きがするのがアップライトピアノやグランドピアノです。美しい響きにひたることは豊かな音楽体験となるでしょう。

次に音の強弱が表現しやすく、タッチで音の表情を無限に変えられるのも魅力です。変化する音色を弾きわけることで表現力が育ちます。

また、鍵盤に重さがあるため、演奏に必要な指や腕の筋力が自然に育つことも利点です。そのため発表会でどんなピアノに出会っても弾きこなせるようになります。

以上の理由で、お子様に本格的にピアノを習わせたいとお考えの方にはアップライトピアノがおすすめです。

 最初は電子ピアノから始めてみても

お子様がレッスンを始めるに当たって、最初は気軽に電子ピアノから始めてみるのもよいと思います。

アップライトピアノは価格が何十万円もするため、「お子様がすぐに飽きてやめてしまったら」と迷う気持ちも分かります。

また集合住宅などの住宅事情により、大きな音のするアップライトピアノを置くことが難しい場合もあるでしょう。近隣住宅への配慮からピアノをあきらめるのはあまりにも残念です。

まずは手頃な電子ピアノを購入してレッスンを始め、お子様の成長の様子を見てアップライトピアノに買い替えるのかどうかを決めるのも、賢い選択だと思います。

電子ピアノを選ぶときのポイント

電子ピアノを選ぶときのポイントは以下の3点が挙げられます。

  • タッチにこだわる木製鍵盤
  • 鍵盤が88鍵そろっているもの
  • 練習効率の上がる録音再生機能

 タッチにこだわる木製鍵盤

電子ピアノの鍵盤はプラスチック製のものもありますが、本物のアップライトピアノやグランドピアノになるべく近いタッチの「木製鍵盤」を選ぶことが大切です。

鍵盤自体に重みがあるため鍵盤の戻りが速く、左右にブレることも少ないので弾きやすいからです。

またプラスチック製の鍵盤と違って「鍵盤の沈みが浅くて奥の方が弾きにくい」ということもありません。

小学生からピアノを習い始めても、3、4年で中級レベルの素敵な曲が弾けるようになります。そんな時にトリルや細かい音符も弾きやすいのが「木製鍵盤」なのです。

 鍵盤が88鍵そろっているもの

ピアノの鍵盤は88鍵あります。そのことを考えずに49鍵や61鍵の電子ピアノを買ってしまうと長くは使えません。

61鍵くらいのものだと、鍵盤が足りなくて両手では弾けない曲ばかりになってしまいます。片手で弾くバンド活動用のものだと思った方がいいでしょう。

お子様が上達してくると88鍵フルに使うようになるため、鍵盤の足りないものだとすぐに買い替えなくてはなりません。

ピアノを習うのであれば、鍵盤が88鍵そろっている楽器が必須です。

 練習効率の上がる録音再生機能

電子ピアノには「録音再生機能」がついているものが多くあります。録音再生機能は電子ピアノならではの機能です。

ピアノの練習では、自分の音や演奏をよく聞いてフィードバックしていくことが必要になります。それを助けてくれるのが、ボタンひとつで録音再生ができる録音再生機能です。

弾いている時は指を動かすことだけで精一杯になりがちです。でも後から録音したものを聞くと思っていた演奏とは違っていて、改善点に気付きやすいということがあります。

また、録音して一人で連弾を楽しむこともできます。

録音再生機能はアップライトピアノにはない優れた機能です。ぜひ使いこなして上達につなげていきましょう。

子供に買ってはいけない電子ピアノ

ピアノを習うお子さんに買い与えてはいけない電子ピアノとしては以下の3点が挙げられます。

  • ロールピアノ
  • ペダルのないもの
  • 同時発音数が少ないもの

 ロールピアノ

くるくると巻いてバッグにも入り、手軽に運べる「ロールピアノ」が人気です。しかしロールピアノはピアノの代わりにはなりません。

まず作りが違います。鍵盤が柔らかいシリコンなどでできており、それをキュッと押し込むことで音が鳴ります。ピアノを弾くのとは全く違う力の使い方をしなくてはなりません。

それに単音で鳴らすならまだいいですが、和音は鳴りづらいです。また押さえてから音が鳴るまでに一瞬タイムラグがあるものもあります。本格的なピアノ曲を弾くようにはできていないのです。

ロールピアノはおもちゃとして楽しむか、コーラスや他の楽器の音取りで活用するのがいいでしょう。

 ペダルのないもの

ピアノ演奏ではよく「ダンパーペダル」が使われます。ペダルのないピアノを買ってしまうときれいに弾けません。

ペダルを使うと鍵盤から指を離しても、ペダルを踏んでいる間は音が長く持続するので、音をたくさん重ねて豊かな厚い響きを作ることができます。

中級以降の曲ではペダルが使われることが非常に多いです。これがないと音がぶつ切りになり、なめらかで美しい演奏とはかけ離れたものになってしまいます。

ペダルのついていないポータブル型電子ピアノでも、後付けでペダルをつなぐことができます。必ずペダルが使えるものを選びましょう。

 同時発音数が少ないもの

同時発音数というと、指は10本なのだから10あれば十分、と思ってしまう人もいるかもしれません。

しかし、ペダルを使って音をたくさん重ねて響きを作っていくのがピアノです。

同時発音数が少ない電子ピアノだと、ペダルを踏んでの演奏中に突然限界に達し不自然に音が消えてしまう現象が起こります。音が消える違和感で練習に支障をきたします。

同時発音数が128以上のピアノならきれいに音が重なった響きに満足して、楽しく練習できるに違いありません。

まとめ

この記事では、お子様用の電子ピアノの選び方や避けた方がいい電子ピアノを紹介しました。

これからピアノを習い始めるお子様が楽しく練習ができて、どんどん上達するようなピアノを選ぶと、ピアノが飽きずに長く続けられます。

お子様の「弾きたい気持ち」「上手になりたい気持ち」を応援できるように、適切に楽器を選んであげたいですね。

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